少年ナイフ名曲紹介「Like a Salmon」2006年 ~その2 歌詞の魅力を探る~
今日は先日発売された名曲「Like a Salmon」の歌詞の魅力に迫りたいと思います。「Like a Salmon」は歌詞がとても重要な役割を担っていると思うので、ちょっとその魅力に迫ってみたいと思います。あと何人かのファンが、「英語なのでよく分からない」といっていたのを見かけたので、すこしでもこの曲の素晴らしさに迫ることの手伝いが出来ればと思ってこれを書いています。今回の日本語歌詞および解説はおもに雑誌「TONE5月号」の少年ナイフの特集「少年ナイフオンザロード」から、メンバーの直子さんによる解説、および少年ナイフファンサイト「MusicSpuere」に掲載されている、4月6日に渋谷での「LastDays」での直子さんの舞台挨拶でのスピーチ(http://www010.upp.sonet.ne.jp/shonenknife/knifetop.htm)を元に、書いています。多少思い入れが入っていますが、その点はご了承ください。日本語歌詞はとにかく直訳重視で、理解しにくいところだけ意訳になっています。
「Like a Salmon」
想像できる?僕の肉の色を
外見で判断しないで
僕の肉の色は美しいサーモンピンク、そう僕はサーモンだから
川で生まれて、凍るほど冷たい水の中を旅している
でも浸透圧は問題ないさ
サーモンのように、川と海を泳いでいく
サーモンのように、太陽の下、毎日泳いでいく
想像できる?僕が高くジャンプできるって
川を上る時、僕はダンスのようにジャンプしている
なぜなら僕はサーモンだから
長い旅の後生まれた川に戻る時、うろこを傷つけながら流れに逆らって泳いでいる
サーモンのように、川と海に生きている
サーモンのように太陽の下で毎日生きている
想像できる?僕は人気があるって
僕のサーモンピンクの肉はとてもおいしそうでしょ?
サーモンのスピリットのように、川に卵を産み死んでいく
サーモンのスピリットのように、多くの稚魚を孵化していく
サーモンのように、川と海を泳いでいく
サーモンのように、太陽の下、毎日泳いでいく
この「Like a Salmon」は1994年に夭折したカートコバーンへのトリビュートソングなので、サーモンのようにというタイトルは、カートをサーモン(鮭)に喩えた歌ということになる。作詞を手がけた山野直子さんはこういった擬人化を用いた手法は従来から得意ではあったけれど、ここではその手法がもっとも効果的で感動を誘う内容になっている。
まず冒頭、鮭の銀色のうろこからは想像できない、美しい内側の肉の色を想像させる。直子さんは従来から自分の好きな色を「サーモンピンク」と公言しており、ジャケットやギターにその美しいピンクをよく反映してきた。だがここでは少年ナイフの世界だけでなく、銀色の鱗と美しいピンク色の対比というのはまさしくグランジファッションとして寝巻きをそのままステージにもちこみ、髪も洗わなかった外見と、マスコミや商業主義と戦い続けついには自殺にいたってしまった繊細な内面という、カートコバーンの持つ対比の擬人化だとすぐにわかる。少年ナイフの世界とカートの世界が合わさって提示されるという、とても優れた世界が冒頭から展開される。
次のフレーズ「でも浸透圧は問題ないさ」はこの歌詞のポイントとなる部分。鮭は海と川を行き来できるわけなのだけれど、他の魚にはできない。それは真水と海水(塩水)という大きな違いで、淡水魚という真水で生活する魚は塩水と自分の中の血や水の間におこる浸透圧に耐えられず、塩水が体に浸入してきてしまうから。ところが鮭はそれが大丈夫。つまりカートは繊細ではあったけど、海にも川にも行き来できる強さも持ち合わせていたということ。そうカートはマスコミや商業主義、偶像崇拝を徹底的に嫌ってはいたものの、売れること、ポップであること自体を否定したわけではなかった。ロックを変えたといわれるほどの大傑作「Nevermind」ではそのポップなメロディーが満載なのが体験できる。多くのインディーのパンクバンドが意固地にポップを否定したのに対し、Nirvanaはインディー精神を重視しながらもポップであることも辞さなかった。カートはそういうステレオタイプから自由な精神を持ち続け、ある意味でのタフさをもちながら素晴らしい作品を生み続けていった。そんな彼のタフさ、自由さ(あちこちに移動できる)を「浸透圧とは関係ない=海にも川にも自由に行き来できる」と表現しているのだと思う。
「うろこを~」からのフレーズはカートファンなら涙してしまうだろう。Nevermind発表後、マスコミとの対決姿勢が強まっていき、麻薬問題、子供を両親から剥奪され保護処置など、カートはどんどん疲労していき、顔から精気がなくなっていきどうなっていくのだろうと全世界が注目の中、それでも「In Utero」という傑作を届けてくれた。
「僕のサーモンピンク~」のフレーズは直子さん流の皮肉が入っているという。いつまでも人気のあるカートをネタに商売をしていく人たちへのちょっとした皮肉なのだろう。カート自身はもっと激烈にこうした人たちへのメッセージを歌にしたことがあった。でも直子さんはあくまでもカートの精神を尊重しながらも、チャーミングに歌にしている。
私が最も好きなのは次のフレーズ「サーモンのスピリットのように、川に卵を産み死んでいく。サーモンのスピリットのように、多くの稚魚を孵化していく」の部分。カートは死んでもカートが産み落としていったもの、あるいは人たち(私みたいな)にその精神は引き継がれていくというもう言葉もないほど美しいメッセージ。直子さんはたぶん意識しておらず偶然だと思うが、英語だと「Spirit Like a Salmon」となるが、なんとこれはNirvanaの決定的な代表作「Smells Like Teen Spirit」に掛け合わせたとしか思えない絶妙のフレーズになっている。
以上「Like a Salmon」の詩の魅力を探ってきたが、ユーモアも美しさも希望も楽曲と同じように見事に託されている。少年ナイフもNirvanaも大好きという人は私だけでなく、世界に多数いると思うけど、誰もがあらためて2つのバンドのファンでよかったと思っているに違いない。
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コメント
ジョージマンさん、いつもいつもありがとう。
でもライブうらやましいなあ。今週末もあるんですよね。ああ、大阪いきてー。
私はひたすらlike a salmonのリピートの日々です。
投稿: ギョーザ | 2006年4月14日 (金) 18時29分
なるほど・・・。
凄く解りやすい解説と対訳ありがとうございます!
本当に素敵な歌詞ですよね。直子さん構想3ヶ月の力作だぁ!
それに引き換え他のアーティストの歌詞ときたら・・・。圧倒的な才能の差を感じました。本当に直子さんは凄いお方ですね!
少年ナイフに出会えて本当に良かった。
ミクシイにレポ書きました。長すぎて、他のBBSには書き込めないんで、見てやってください。何書いてるんだか分かんないかも?いかれちゃってます(汗)
投稿: ジョージマン | 2006年4月10日 (月) 22時35分