「ポールマッカートニー ソロ時代を聴く」
ビートルズのメンバーでは断然ジョンレノンが好きで、ジョンのソロ時代のアルバムはビートルズとは別の意味で大切に聴いてきた。でもビートルズ時代のポールはもちろん大好きだったのだけれど、なぜかソロ時代のアルバムは得意ではなくてあまり聴いてこなかった。ジョンもジョージもソロ時代はビートルズとはうまく離れて独自の価値のアルバムを作ることができたけど、ポールはビートルズを引きずりながら、うまくソロとして表現でききれなかったのかななんて勝手な思い込みを持っていた。
なんでだろう、この年になってポールのソロ時代のアルバムが完全に理解できるようになってきた。今までのが本当に思い込みに過ぎなくてポールはポールで独自のすばらしい世界を築いていたんだとようやく気づかされた。もったいない話だけど、それでも今になって気がついてよかった。今年ビートルズリマスター以上にポールに楽しませてもらいました。宝の山が突然目の前に現れたかのよう。せっかくだから大好きなアルバムベスト5を紹介しましょう。
第5位「Venus & Mars」
ビートルズ以降、ポールが目指した方向が4つほど感じられて(1)サージェントペッパーズのような曲と曲との関連性をもたせたトータル性(2)アビーロードのような組曲(3)R&Bやレゲエなど黒人音楽あるいはそういったグルーヴのあるビートへの接近(4)初期ビートルズのようなライブ感のあるエンターテイメントロックではないだろうか?このアルバムはそういう観点からすると(1)と(4)の部分をポールなりに完成させた、やりたいことをやって成功させたアルバムだろう。とにかくトータル性があって、曲のつながりがよく、アルバム一枚として聴きやすいし、エンターテイメントアルバムとして最高の出来だ。アレンジが凝りに凝っていて、サージェントペッパーズでやり残したことをここで全開にやってみたのか、ただビートルズよりずっと開放的で気軽に聴けるロックになっているのがポールらしい。文句のつけようがない一枚。
第4位「Ram」
発売当初最悪の評判を呼んだといわれるこの作品も、昨今ではミュージックマガジンあたりに最高傑作の評価を呼んでいる。ポールのすべてがここに表現されていると評価されるようになっているけれども、再評価してくれることはとってもうれしいけど、これがポールのすべてかといわれるとちょっと答えに窮するなあ。上の4つの方向性のなかで、これは(1)、(2)、(4)は確かに含んでいるかな。このアルバムも一曲一曲の完成度がずば抜けているというより、曲と曲のつながり、全体的なアレンジ、面白いアイディアなどが素晴らしい。とにかくアレンジとそれに伴う音深い響きは、スピーカーからぜひ聴いてほしい。素晴らしくいい音がします。特にRam,アンクルアルバート、Back Seat of My Car などアレンジとメロディー展開が凝っていて、通向けとしかいいようがない深い響きを聴かせてくれます。
第3位 「Chaos And Creation In The Back Yard」
Ramより上に持ってきました。もう完成度だけとったら全曲、ビートルズのホワイトアルバムに入れてもおかしくない出来。きめの細かいアレンジ、大げさに展開せず、英国風の品のあるコード展開、それに寄り添うすべてポールが担当する楽器演奏。この作品の貢献度にプロデューサーのナイジェルゴドリッチの役割は多大ですね。彼がいなかったらはっきりいってポールはこれを作れなかったでしょう。この作品に関しては上の(1)~(4)のどれでもなく、また1stアルバムのようでもなく、ポールのディスコグラフィ上もっとも異色な傑作だと思います。一聴地味なので、通勤とかでなく、部屋でスピーカーから音だして聴いてみてください。室内楽を演奏するがごとく。ロックではありませんが、これもポールの最も優れた一面であることは間違いありません。
第1位 「Tug of War」
すみません、2位がなく、1位二つです。これもやはりジョージマーティンプロデュースというのが決定的でしょう。さらにはエンジニアがジェフエメリック(VenusMarsもそうです)。完璧にビートルズの再現ですねこれは。本人も封印してきたんですね、ビートルズ風というのを。真面目な人なんですね。でもこのアルバムでは遠慮なく、ビートルズのポールマッカートニーを全開。もう泣くしかありません。前編美しすぎるし、ロックで決めたパウンドシンキング(経済/不況ソング)もポールソロ史上もっとも品格と風格にあふれたロックサウンドです。これは発売当初から大好きでした。なにしろビートルズっぽいですから。ビートルズを卒業したファンが初めて聴くポールには最適でしょう。
第1位 「Band on the Run」
これもTug of Warとならぶポールの最高傑作ですね。上の(1)~(4)の要素がすべて詰まっています。初めて聴いたときこれがぜんぜん分からなかったのです。なんかメロディーの繰り返しが多くて単調に聴こえて。今だとこれがいかに凄いかよく理解できます。ポールはリズム面で大きなチャレンジを自分に課したのですね。R&Bのようなグルーヴを自分の曲に持ち込んで、その上でハーモニーとメロディーを組み合わせてみようと。多くの曲を自分ひとりで(とくにベースとドラム)演奏したことが幸いして、リズムとハーモニー、メロディーが最高の形で表現できた一枚です。昔単調に聴こえてしまったのは、このリズムを主体に組み合わせたハーモニーとかを聴き取ることができなかったから。今ならいかにすごいことをやってそれを、美しく響かせることに長けた作品なのか分かりすぎるくらい分かります。あと単純に名曲も多いです。タイトル曲にJet,BlueBirdなどなど。ちなみにこのアルバムでのりリンダとデニーのコーラスワークも見事に決まっています。
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