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2011年10月 7日 (金)

「大阪ラモーンズ/少年ナイフ Osaka Ramones Shonen Knife」 2011年7月作品

7月に発表された少年ナイフの新作「大阪ラモーンズ」が素晴らしい。何度もリピートして100回以上既に聴いている。今年もあと3か月を残すけれど2011年度ロック部門My No.1 CDとなるのは確実(ちなみにNo.2JamesBlake,No.3Battles)。

7月に購入したときは新宿のタワーレコードだったけれど、少年ナイフのコーナー以外にも特設コーナーがあり、面白いのは洋楽のラモーンズのコーナーにも「大阪ラモーンズ」がたくさん置いてあった。今、とにかく心の底から楽しいロックが聴きたいというすべての人に推薦できる傑作だと思う。

少年ナイフに特別な思いを持っているけれども、実は今回「ラモーンズのカバーアルバム」を出すと発表があった時、少々心配があった。少年ナイフがラモーンズをフルカバーしていつものナイフのアルバムやライブのような「マジック」がはたしてどれくらい生まれるのだろうかと。少年ナイフには「Top of the World」のようなオリジナル曲に劣らない人気のあるカバーが存在する。これはカーペンターズのポップフィーリング溢れた美しい楽曲をナイフ流の解釈を施して見事なパンクポップに生まれ変わらせ、本来の楽曲の良さを生かしながらも少年ナイフのポップな個性を焼き付けた手法が世界の人を驚かせ、人気曲となった。それに比べ、ラモーンズはあまりにも少年ナイフと音楽スタイルが似ており(少年ナイフがラモーンズをお手本としたため)、少年ナイフの創造性が入る余地があるのだろうかと。更にいえば、これを聴く人のターゲットが少年ナイフファンの中のラモーンズファンというか、フォーカスの絞られたなにか趣味的な作品になりはしないだろうかと。でもやっぱり少年ナイフは凄かった。予想したような心配はかけらもなく、すべてのロックファンに開かれ、オリジナル作品やライブと全く同じレベルの感動を与える傑作となって届けられた。

この作品の成功要因は「完全コピー」スタイルにあるのではないかと思っている。しかし皆さんの知っている範囲でおよそ世界的に成功したプロのロックバンドがあるバンドの完全コピーで一枚のアルバムをつくったなんて例、どれだけ知っていますか?トッドラングレンとかがビートルズの完全コピーを2,3曲発表したり、チープトリックが「サージェントペッパーズ」を完全再現などありますが、あまり例のないのでは。少年ナイフの完全コピーの範囲は「テンポ」「フレーズ」「アレンジ」「メロディーライン」と楽曲/演奏のほぼ根本は完全コピーになっている。比較して少年ナイフのオリジナリティーは「音色」「サウンド」「アンサンブル」「歌(声質含む/ただし歌のメロディーラインなどは完全コピー)」面となっており、あれだけオリジナリティーを重要視する少年ナイフが自らの自由な発想にあえて制限をかけ、演奏に臨んでいるのが分かる。リスクも含んだアプローチかもしれない。完全コピーなんてプロのバンドの「商品」じゃないって思われる可能性も大だからである(そういう評論はなかったから良かった)。

でも演奏を聴いた人ならこのアプローチの素晴らしさが理解できたはず。なんといってもとっても自然に「ああ、ラモーンズって本当にいいなあ、いい曲書いたんだな」と最初の感想が出てきた。このアルバムを聴いているとラモーンズの凄さ/楽しさがよく分かる。日本では「パンクゴッド」のようなとらえ方が一般的だけれど、アメリカではもっと「グレイトアメリカンバンド」のような感じではないだろうか。アメリカの公共の場(野球場など)でラモーンズが流れるのを何度か聞いたことあるけれど、そういうのを目の当たりにするとラモーンズってパンクって括るのはちょっと窮屈な感じで、もっと広くアメリカ/ロック好きに愛されているバンドだなあと感じる。この大阪ラモーンズの演奏からはそんな、パンクだけにとどまらないラモーンズの楽曲の素晴らしさ、楽しさを教えてくれる。

そして同時に少年ナイフの尽きることのない魅力も同時に湧いてくる。カラフルでスピード感のあるサウンド、柔軟に重なり合ったアンサンブルの妙味、ツルツルした加工の施した人工的な音色と対極にあるギシギシ/ザラザラした音触を見事にとらえた録音。女性ならではの個性を生かして表現した歌声、そのどれもが今、目の前で演奏しているがごとく生々しく、フレッシュ。演奏が生き生きして淀みがなく、ハードなのにカラフルなナイフマジックが炸裂して、アルバムの最初から最後までひきつけて離すことがない。ロック初心者から、小学生から大人まで、このアルバムは誰もが入門でき、また最後に帰ってこれるロックの故郷のような懐かしさも併せ持っている。

最後に泣く泣く4曲だけ感想を。

Rock ‘N’ Roll High School」これはもう最初のイントロから導入部の「ロック、ロック、ロック、ロックンロールハイスクール」というなおこさんのボーカル部分のみで感激。そうそうこれなんですよ、この「軽快さ」がこの曲にはとっても重要。叫んだり、力を入れたりしてはダメ。パンクハイスクールじゃなくてロックンロールハイスクールなんだから。このボーカルが全編にわたって、軽快さ楽しさを最大限に演出してくれる。楽しくてしようがない。またバックのコーラスの同じフレーズもまさにハイスクール=女子高生がスタジオに紛れ込んで歌ってしまいましたくらい、フレッシュで面白すぎる。不良を気取った歌詞、学校教師への反抗なのに、なぜか学校の運動会にでも流したくなるポップさ。これこそロック。

Sheena Is A Punk Rocker」まずイントロからきりとしったベースを核に見事なバンドアンサンブルが耳に心地よい。そこにボーカルのりっこさんの歌が乗っかると糖度が上昇したかのように甘い味わいと、持ち味の透明感いっぱいの空気が広がる。美しい草原をソフトフォーカスで捉えた写真のような印象。というのはこのサウンドと歌がなぜか遠い記憶をよみがえらせ、なにかとっても懐かしいような切ない感じにさせてくれるから。ジョーイ独特の発音もきれいに踏襲していて、とても聴きやすい。ライブではこういう感じはなくて、本当に楽しくパンクロッカーって感じでノリノリでしたけど。アルバム中盤を飾る傑作ですね。

The KKK Took My Baby Away」これはアルバム後半の、ハイライトといっていい素晴らしさ。ボーカルを担当したえみさんの美声っぷりに大いに驚かされたけど、一番驚いたのはこの曲の解釈。ボーカルのえみさんはWebサイトでこの曲を「切ない気持ちがぐっと伝わってくる」と言っていましたが、私はこの曲はある種のブラックジョークじゃないかと思っていた。バンド内同士で彼女を取った取られたって歌詞もおもしろいけど、それをこともあろうに「KKK」が連れてったなんてちょっと危ないスレスレだし(日本でこんな過激な表現まずできないと思う)、大統領やFBIに電話して彼女を探そうなんて、おもしろ過激なブラックジョークだよなあと思ってしまう、なんというか男子独特の世界というか。でも少年ナイフとえみさんのボーカルにかかると、本当にとっても切ないし、なんというか50年代のキャンディーポップのようなキュートな世界になってしまうから、ナイフの表現力に感動してしまった。コーラスも秀逸。

Beat On The Brat」このカバーはテンポやアレンジはそのままだけれども、演奏と歌はオリジナルよりもかなりメリハリのついたダイナミックなものになっており、躍動感いっぱいのナイフらしい仕上がりになっている。オリジナルはもっとダルでくぐもったサウンドが危ない魅力を放っているけど、ナイフはクリアでメリハリのついたぬけのいいロックサウンドを展開している。ある意味もっともナイフらしいカバー。個人的にはアルバムでも一番好きだ。

これは少年ナイフ結成30周年記念のアルバムとのこと。30年の凄さはこのアルバムに見事に反映されている。きっと今年の残りもこのアルバムのリピートは止まらないと思う。

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