2006年6月 4日 (日)

ライブレビュー「ベル・アンド・セバスチャン/belle&sebastian」2006年6月3日品川プリンス ステラボール

ベルセバことベルアンドセバスチャンのライブを見に行ってきた。ベルセバのライブの見所ってどんなものだろうか。やっぱりCDでのあの完璧な演奏を再現できるのか、あるいは近作でみせるポップでグルーブな感じをどう見せるのかなどなど。あれだけCDで特別な世界を堪能させてくれるグループなだけにライブへの期待値も特別なものになってもしょうがないだろう。

そしてこの夜のベルセバ、たぶんほとんどの人が持つ期待値を大きく上まり、現代のブリティッシュポップ/ネオアコの最高峰であることを完璧に見せ付けてくれた。このライブを体験した人も、残念ながら行けなかった人、これからベルセバを聴いてみようという人に向けて、今日はこの夜のベルセバのライブの魔法を4つのキーワードで探って行きたいと思います。

まずは「1.演奏の素晴らしさ」演奏がスタートしてまず目を引くのはバンドのメンバーの多さと楽器編成。チェロ、バイオリン、トランペットを含め総勢8人編成。これが皆とても巧い。巧いだけでなく楽器間相互のバランスが完璧。よくチェロなどの弦楽器をステージに持ち込むロックバンドは多いが実際エレキギターなどの音にかき消されてなんのためにそれを持ち込んだのか意味が分からないことが多い。ベルセバはチェロもキーボードもエレキもアコギもすべてが完璧なバランスで鳴らされ、響きの美しさがCD以上。ライブハウスとは信じられない音のよさである。また凄いのは一人でやく3つの楽器をこなすこと。8人編成というのはジャズはクラシックではあたりまえだが、ポップフィールドでは大変珍しい。しかもジャズやクラシックと違って、一人一人の楽器が固定されているわけでなく、さっきまでベースを弾いていた人がトランペット吹いたり、バイオリンの人が、キーボード、あるいはヴィヴラホーン、さらにはリコーダー、フルートとつぎつぎにいろんな楽器をこなす。それでいてその楽器はすべてエレキにまけずにきちんと響いてくる。そしてまとまりよく、バラードを繰りだしたり、モータウン真っ青のグルーヴィーかつファンキーでポップな演奏を次々に披露してくれる。ダンサブル/アコースティック/の間を自由自在に駆け巡ることが出来る。だから全然飽きることがない。

「2.DIYの精神」ベルセバが単なる趣味的ポップグループでない、強い主義主張をもったバンドだというのはCDでもはっきり分かる。でもライブを見ると特にその思いを強くする。ジャケット、T-シャツ、ステージ衣装、アレンジ、楽器演奏のすべて、を全部自分たちでコントロールしてきちんとファンに届けたいという姿勢がありありと感じられた。初期の名曲「The boy with arab strap」でのワンシーン。CDでは曲の途中主旋律をリコーダーの2重奏(あるいはダブルトラック)+ピアノで再現するところがあるが、実際ライブではまさか縦笛だしてきて弾いたりはしないだろう、なにかアレンジするのかとおもいきや、それまでピアノを弾いていた女性二人のメンバーがさっと縦笛をだしてきて、あの旋律を見事に2重奏するではないか。いや驚いた。ここまで自分たちだけで自分たちの世界を描きつくそうとするバンドはなかなかいない。ゲストも一切なしにである。

「3.80年代へのリスペクト」ベルセバが80年代のイギリスインディーズロック(ネオアコ系)に郷愁を持っていることはよく知られたことである。オレンジジュース、スミス、アズテックカメラ、フェルト、コクトーツインズなどなどの、私もリアルタイムで影響を受けたインディーズロックの数々。今となってはバカにする評論家も多い中、ベルセバは見事なまでにあの当時のロックを昇華し、現代にまで蘇らせてくれた。それもきちんとしたリスペクトを下地として。服装、髪型、繊細さ、ボーカルの美しさなどあの当時の雰囲気を丁寧に救い上げ、2000年代に再現させてくれた。当時とちがうのはベルセバが圧倒的に巧いということだけ。スミスなどが日本にこれなかっただけ、そうした因子を受け継いだベルセバを日本で見れることが本当にうれしい。最高に笑ったのが、スミスのモリッシーが得意としていたイカダンスというか痙攣ダンス。これはレディオヘッドのトムヨークもやっていたけれど、ブリティッシュロックバンドだけがやる不思議なダンスだが、ベルセバのスチュアートマードックも笑えるくらいイカダンスを披露していた。

「4.ファンを大切にする姿勢」最後になるけれどもとにかくライブではファンを大切にする姿勢を見せてくれる。スタジアムロックとかに慣れている人にはここまでファンサービスをしてくれるバンドを見るだけで目がうるうるしてしまうだろう。曲間で何かにつけて話しかけてくれて「どんな気分?静かにやったほうがいい?ダンスしたほうがいい?その中間?」とかいってみたり。「ライブの後はどうするの?ビール?ダンス?もしよかったら僕たちと話そうよ」といってみたり、とにかくファンに語りかけ、自分たちのエゴでなく演奏を楽しむことを共有してもらいたいという姿勢がとてもやさしく感じられた。ネット上ではあらかじめやって欲しい曲の投票なんかも行われていたようだ。曲も最新アルバムだけでなく、皆が聴きたいような昔の曲の積極的にとりあげ楽しませていた。

私はライブが終わると必ず周辺にいる人のしゃべっていることに注意深く耳を傾ける。それで皆が満足しているかどうかたいてい分かりのである。この日誰もが笑顔で「楽しかったよー」「最高おお!」という声があちこちから漏れていた。次の来日、きっと同じ会場では入りきらないほど人気が倍増しているに違いない。そう思わせるほど口コミで人に伝えたくなる暖かく楽しいコンサートだった。

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2006年3月26日 (日)

ライブレビュー「ザ・ローリング・ストーンズ/ア・ビガーバン・ツアー」2006年3月22日東京ドーム The Rolling Stones A Bigger Bang Tour

2週間も更新を怠ってしまい、申し訳ありません。その代わり今日は気合を入れてローリングストーンズの最新公演をレポートします。行って来ましたローリングストーンズビガーバンツアー、東京ドーム。平均年齢60を超える現役最長寿バンドがいったいどんなステージを見せるのか興味津々で東京ドームに向かうと、以外にも前回のツアーよりも若い人が多く、これが最後かもしれないなどという報道もあったから伝説を見てみたいという人も多かったのかもしれない。といっても以外に多いというだけで中心は40歳以上。

実はこの日私は前日のWBCの野球の余韻が引きずっていて、なかなかストーンズモードに入れないでいた。あんなに楽しみにしていたのに。でもこれにはもう1つ大きな理由があって、前回の「リックスツアー」が正直に言ってあまりいい出来ではなく、周りの友人も「ストーンズはもはやショー」と決め付けてしまい寂しい思いをしていたからだ。今回もそんなだったらどうしよう。これも以前ものすごい思い入れのあるアーティストのライブがよくなくて、がっかりしてCDを全部売ってしまった事があるが、ストーンズでそんな思いはできればしたくない。さて私の願いが届いたのだろうか、この日東京ドームはロックの神様が舞い降りてきたかのように、ストーンズは壮絶な演奏を繰り広げた。私が過去行ったどのストーンズのライブよりもカッコよくて、もうとにかく最高の非の打ち所がないステージを見せてくれた。

相変わらずドデカイステージセット。そこにサポートメンバーが何名かステージに上がっている。一見すると派手なこのステージセットを見るとなんだかいかにも「ロックショー」という感じで、観客がハリウッド映画などを楽しみに着ているのとあまり変わらない雰囲気で、ストーンズにロックの凄みを今更求めている私にはちょっとこういうのはもういいじゃないかなー、と思ってしまった。だが2006年型のストーンズはまったく違っていた。1曲目の「ジャンピングジャックフラッシュ」から3曲目あたりの「シーズソーコールド」くらいまでで、もうその電気ショックといわんばかりのやかましいエレクトリックサウンド。キースやロンは多くのギタリストが発想するような流れるような旋律は決して弾かず、これがストーンズサウンドだといわんばかりの主張を繰り広げる。かつてウマヘタといわれたキースのギターはそれがまったくの誤解だと分かる。上手いはやっぱり指が流れるように動いてギター本来の美しいあるいはヴァンヘイレンのようにきちんと均一的な音を出すことなのだろうが、キースは感覚的にそういったメロディー、弾き方、指の運び方を拒否しているようだ。ギクシャクしているようなギターなのに、あの必殺のリフを随所で織り交ぜて決して逸脱していくことのないグルーブを生成する。なんというギタリストだろう。こういう弾き方一つ一つがストーンズをロックの頂点にたどり着かせ揺るぎないものにしているのだと思う。

そしてミック。もはやこの人の凄さは言葉で言うまでもないだろう。あの広い東京ドームを右から左まで、常に走って往復、歌っている中ダンス。どんな曲でもワイドレンジで伸びる声で叫びまくり。衣装もこまめに着替え。もう60歳越してから一年ずつ若返りの薬でも飲んでいるのだろうか。術後で体調が心配されたチャーリーもまったく問題なく、重たい(そうあの風貌でなんとも重たい)ビートを叩き込んでくる。

先日見た現代のエースとも言える「ホワイトストライプス」と比べるとやはりストーンズはステージの構成が圧倒的に巧い。バラード、ブルーズ、ロックンロール、ディスコなどあらゆる曲をなんともバラエティに富む演奏で繰り出すものだからまったく飽きがない。もちろん多くのヒット曲があり、どの曲もカラオケのように一緒に歌えるというのも強み。前回の来日ではこういう要素が逆に過度のエンターテイメントに映ってしまい、ロック独特の凄みを失ってしまったような気がしていたが、今回のようにエッジの効いた鋭い演奏だとこうしたキャッチーな要素は逆に光り輝いてくる。ストーンズの凄さはこういうものだと思う。最高のショーのようで過激なライブハウスのようでもある。ものすごくポップなようでいて、エッジなリフがポップスファンを寄せ付けないようでもある。こういう二律背反な要素を今回のステージではたっぷり見せ付けてくれた。

ステージも押し迫る頃、キースが突然一人でも前に来てきれいな白いギターを抱えて、なんとも美しい旋律を弾く。これは美しい新曲なのかなとおもいきや、その美しいフレーズは「黒く塗れ」に繋がっていく。白いギターと黒く塗れ。なんともすごい対比である。黒く塗りつぶせという過激なメッセージとダークな旋律もなぜかこの祝祭空間にぴったりある。ストーンズとはそんなバンドである。

さてどうしてもレポートしておかなければいけないのはやっぱり「センターステージ」。最近のストーンズが取り入れている、ドームの真ん中にステージをもう一個作ってそこに移動して、サポートメンバーを要れずにストーンズだけで演奏し、バーチャルクラブハウスを作ってしまうもの。ここ数年のストーンズのライブはこれが売り物だった。今回もセンターステージがあり、なんとも幸運なことに私は目の前で見ることが出来たのだが、今回に限って言えばセンターステージがメインということはなかった。何故ならセンターステージを作らなくてもメインステージで十分クラブハウスを彷彿とさせる過激な演奏を繰り広げており、それだけでストーンズが世界最高のバンドだと十分理解できたから。もちろん個人的にはあんな近くでミックやキースを見れたことは一生の思い出だけれど、2階席の遠くの人と私とで感動に違いはないと思う。それほど今回のストーンズは凄かった。もちろんPAなども考えつくされており、あちらこちらに音のいいPAが配置されているので、これが東京ドームというくらい音が良かった。

公演が終わったと友人と合流。みな一様に感動しきっていた。大衆と向かい合うことを拒否せず、東京ドームというショーの本場で見せ付けたロックンロール。今夜ストーンズこそ最強のロックバンドだった。

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2006年3月12日 (日)

ライブレビュー「ホワイトストライプス」2006年3月6日 ZAPP東京

まず会場であるZEPP東京に入ると結構年齢層が高いのにひと安心。ホワイトストライプスが若者だけでなく、かなりの層まで人気があるのが良く分かる。また男女比も7:3あるいは6:4というくらい女性も多い。かなりコアなブルーズを聞かせるバンドにも関わらず、観客のバランスがとれているのがうれしい。やはり単に一ブルーズ・ガレージロックというより「次世代のトップランナー」としてホワイトストライプスを見てみたいという人が多いからに違いない。これからの演奏がなにか新しいことをもたらしてくれるに違いないという熱気に満ち溢れていた。

パンパンに膨れ上がった会場にホワイトストライプスが登場するとその佇まいの構図が実にカッコイイ。赤と黒に染められたバックを背景に、真っ白な衣装を着たギター・ボーカルのジャックが真ん中に、うすい白のシャツのドラムのメグが左に座り、二人だけのアンサンブルの世界が佇まいだけでうまく表現されている。実にアートな雰囲気だが、そこから放たれる音は轟音の一言。すごい音量の上、とても2人とは思えない分厚い音の塊を放出してくる。ギターはとてもうまく変幻自在。メグのドラムもパワフル&グルーヴィー。ジャックのボーカルはなにか50年代のブルーズマンの魂が乗り移ったほど熱い雄叫びだ。いやホントシカゴかニューオリンズかここは、というくらいトリップするブルーズサウンド。

最新作で見られたレッドツッペェリン色はまったくなく、ブルーズ&ロックンロールの世界。それもデトロイトパンクを通過して、2000年代のフレーバーを混ぜているのだから、誰もが夢中になって当然の王道ロック。もう最初の3曲くらいは会場が割れんばかりの熱狂に包まれていた。二人という編成も独特の音楽性に色を添えている。ベースレスという実に珍しい構成だが、この構成がいわゆるロックから逸脱し、自由で創造的なアンサンブルを繰り広げる原動力となっている。しかしこのギターとボーカルの凄さはある程度予測できたことだが、ドラムのメグのカッコイイこと。リズムキーパーというわけでもないし、バカテクを披露するわけでもない。実にしなやかな手さばきで、ジャックの作った曲にグルーブと色彩を与えていく。もちろん見た目の美しさもCDでは分からないポイントだ。2人で見つめあい会話して演奏を進めていく様子は、昔に見たルーリードとジョンケイルの緊張感溢れるアンサンブルを彷彿とさせる。

轟音が続き耳が痛くなってきたところで、ピアノ&ドラムの演奏。またときにはアコースティックギター、さらにはマリンバ(木琴)なども登場し、実に起用でローリングストーンズのブライアンジョーンズのように幅の広い楽器パフォーマンスも披露。しかしどんな楽器を使おうが濃いブルーズでありながら、2006年の最新ロック最前線であるようなサウンド感覚が凄すぎる。また感心したのが入念に作られた楽器の音色。ジャックはこまめにギターを変えるのだが、その度にきちんとその曲にあったギターのサウンドが聴こえてくる。またメグのドラムも素晴らしく音がいい。間違いなく相当事前に音のチェックがなされているに違いない。Zeppという会場も音がいいのだろうが、ホワイトストライプスの音色へのこだわりは例え轟音でもはっきりと主張が伝わってくる。

アンコールも最後の方に近づき、名作「エレファント」から「Seven Nation Army」が披露されると待ちわびていた観客がここぞとばかり踊りまくり。観客の熱さも最近ありがちな何でもとりあえず盛り上がりみたいなものでなく、期待通りのパフォーマンスを見せてくれたアーティストに対するうれしさに溢れたものだったに違いない。

ただこの稀代のロックバンドにもいくつかの課題は残ったように思える。一時間半くらいのステージをこなすには正直言って少々単調に思えた。2人編成が最高にカッコよく見える瞬間もあったが、ちょっと単調に思える瞬間もたびたびあった。あとジャックのボーカル。すこし一本調子すぎて、どの曲も同じに聴こえてしまう。あとメロディー。メロディックな3枚目からの局が少なかったせいか、どうしても耳に残る曲が少なく演奏のダイナミズムさだけではカバーできないように思えた。そういう課題はあったにせよ、やはりトップランナーとしての風格を見せ付けた一夜だった。

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2006年1月22日 (日)

ライブレビュー「アース・ウインド&ファイアー」2006年1月18日 日本武道館

アース・ウインド&ファイアー35周年記念と謳われたこの日のライブ、チケット代は1万円であったが、誰もが「元を取った!」と満足して帰ったに違いない。完璧なエンターテイメントを披露してくれ、心から楽しいショウであった。演奏、ダンス(振り付けかも)、メロディー、ハーモニー、歌、照明などすべてがここに来たお客を楽しませるよう10点満点のパフォーマンスで楽しませてくれた。

この日武道館に到着すると、皆早くから会場に駆けつけており、開演時間にはすでに超満員。さすがに年齢層は高めだけれど、女性も多く華やかな雰囲気。時間が来て、メンバーがステージに現れると、ロックのコンサートならここで総立ち状態だが、私のいる一階席はほとんどの人が座っているのが大人のコンサートっぽい。アースは一番の中心メンバーのモーリスホワイトを欠くという構成だが、そんなことはライブの出来に微塵も関係ない。ホットでパワフルそしてなによりスイーティー。この感じどこかでも記憶があるなと思ったら、昨年の夏のフジロックでのビーチボーイズそっくりだった。ビーチボーイズも中心メンバーのブライアンウイルソンを欠いていたが、まったく関係なく、素晴らしいコーラス、黄金の選曲で観客を大いに喜ばせていた。アースもとても似ている。とにかく基本の曲がいうまでもなく素晴らしい楽曲なので、きちんと歌えて、演奏できればそれだけで最高のステージになってしまう。その上にアースはとにかく見せる見せる。管楽器を吹いていようがベースを弾こうが面白いステップを踏みながら演奏する。これがなんとも心地よい。その小刻みなステップを見ているだけでウキウキしてくる。

2曲目あたりでいきなり「シャインニングスター」。いいのかこんな最高傑作みたいな曲をもうかまして。私はこの時点ですでに舞い上がっていた。でも私の周りはまだ座っている人が多い。しかしここまで余裕で聴いていた観客も次の曲では武道館全員総立ち。「ブギーワンダーランド」だ!「ダンス!」のコーラスが始まると、もう武道館が破裂するのではというくらいの盛り上がり。みんなこれを待っていたんだ。しかし年とろうが、仕事で忙しかろうが皆ダンスが大好きなんですね。普通の人って踊る機会はなかなかないから、こういうショウを待っていたんですね。ほとんど私より年上の感じの方ばかりだったが、一生懸命ダンスする姿がなぜかかわいく見えてしまった。

一通りアップテンポの曲が続くとスイートバラードタイム。「リーズンズ」を初めとしてフィリップベイリーがとろけるようなスイートバラードをお手本のように披露する。隣の女性が「ああ、私のために歌ってくれてるみたい」と叫んでいるのには笑ったけれど、まさにそんな感じの甘い歌声とメロディー、ハーモニー。

バラードタイムが終わるといよいよ終盤に突入。「ファンタジー」、「セプテンバー」、「レッツグルーブ」が惜しげもなく連発されると、そのサービス精神に観客は陶酔状態。しかしアースのエンターテイナーぶりはハンパじゃない。皆が聴きたい曲を聴きたいタイミングで怒涛のように放出してくる。それも華やかな照明とあのステップダンスで攻めてくるものだから、耳、目、体すべてが反応してしまう。演奏が終了するともう割れんばかりの拍手アンコール。残念ながらアンコールはなかったものの、帰路につく人々は口々に「ああ、面白かったよー」「サイコー」と叫んでいた。いや参りました。大地、風、炎と題されたバンド名の通りのスケールで観客をノックアウトしてくれた。今年最初のコンサート、なんとも心温まるものであった。

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2005年11月26日 (土)

アンダーワールド~エレグライド2005 幕張メッセホール 2005年11月25日

アンダーワールドのライブを見に幕張メッセで行われたエレグライド2005に行って来た。アンダーワールドは過去エレグライドやフジロック、テクノのフェスなど何度も来日し、その度に高い評価を得ていた。私はCD、とくに「ボクーフィッシュ」が大好きで機会あれば見に行こうと思っていたのだが、残念ながら今まで一度も見たことがなった。だから今回はかなりの期待をしていた。

エレグライド2005はもちろんアンダーワールドだけでなく、コールドカット、オウテカなどのテクノ愛好者にはこたえられないラインナップなのだが、夜の9時から朝の6時半までなどという修行のようなタイムスケジュールなので、自分の体力と相談し、アンダーワールドだけ見ることにした。会場についてみると以外にも年齢層が高い。ある人から聞いた話だとエレグラは子供ばっかりで居心地が悪かった、などと聞いていたものだからひと安心。30代いっぱいいるじゃないの。女性も多数。こういうイベントが定着してきた証拠だろう。みんなハイパーなものだけを期待しているのではなく、夜中のパーティーをちょっとした気分で楽しみたいとか、食事もお酒も楽しみたいなど楽しみ方が多様化し、大人も参加できるようになってきたのかもしれない。実際会場もとてもなかなかかっこいいグラフィックデザインの看板やスライド/ビデオがあちらこちらで投影され、祝祭気分を盛り上げてくれる。

夜中の0:00に到着し待つこと一時間半、アンダーワールドが登場した。ここからなんと3時間のノンストップのステージが繰り広げられた。サウンドは基本的にCDとまったく同じ。ただこれだけの人(1万人はいる)のダンスと、グラフィックデザインが3次元化したような幾何学的な照明がCDとはまったくちがう盛り上がりを演出してくれる。テクノはたいてい序盤はクールなリズムで決めだんだんと盛り上げていくものだが、アンダーワールドもそれは同じ。ただ30分もたってくると会場のヒートアップは凄まじいものになってくる。一万人近くがほとんど全員踊っているという姿も圧巻の一言。ロックのライブなどは半分くらいの人は熱狂し、半分くらいの人は座っていたり、落ち着いてみたりしているものだが、アンダーワールドのライブは完全なお祭り状態。テクノがもたらす高揚感というのは音楽を聴くというのとまたちょっと違うのかもしれない。

アンダーワールドがもたらす興奮の技に、まず曲の導入にビートが一定のリズムを刻み、そこに高域がきらきらしたリズムが重なり合うというのがある。この対比が1分くらい続いた後、必殺のエレクトロニックベースが中核のメロディーとして突如割り込んできてものすごい太いビートをたたき出すというのがある。このエレクトロニックベースが入ってくる瞬間「これやべーよ」とか「かっこよすぎじゃない」なんて声があちこちから聞える。まあこれだけなら他のテクノにもあるかもしれないが、アンダーワールドの場合、さらに生のボーカルが追い討ちをかけるように重なり合ってくる。このボーカルの効果はやはり大きい。他のバンドと決定的な差を生んでいる。幾何学的なクールなサウンドにホットなビートとボーカル、そして大ヒット曲「ボーンスリッピー」に代表されるキャッチーさ。この日のアンダーワールドもそうした特性を見事なまでに打ち出していた。

3時間の長丁場だからさすがに途中さすがにだれる場面(これは個人的に)もあったが、そういうときに必ずどこかクールで透明感のあるサウンドを打ち出してくるところがまたよい。ノリノリ一辺倒とか、低音がズンズンやたら単調に響き渡るとか、テクノDJが陥りがちな流れをアンダーワールドはメロディー、透明感、ボーカル、など様々な要素で回避している。個人的にもっとも好きなところはやはり、テクノテクノしすぎずどこかナチュラルだったり、キャッチーさがあったり、ロックのような肌触りもたっぷりあるところ。

それにしてもみんなよく踊る。一緒に踊っているとなんともいえない開放感や自由な空気を感じてしまう。最高のロックのように陶酔感を味わうというものではないのだが、この感覚というのは他では味わえない貴重なものだ。これはアンダーワールドだけでなくエレグライドというイベント、あるいはテクノという音楽が持つ自由感なのだろう。

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2005年8月15日 (月)

Summer Sonic 05

サマーソニックゼロファイブ、NINみたさに行ってきました。実は家の近所で開催されるにも関らず、このフェスにいくのは初めてだった。03年には少年ナイフの次に好きなレディオヘッドがこのフェスに出演し、伝説のパフォーマンスを繰り広げたという。近所にレディオヘッドが来たのに、チケットがとれず悔しい思いをした。今年はNINが出る!!だから2日券を手に入れ、相当気合を入れて望んだ。

ここのパフォーマンス報告の前に全体の印象をひとこと。2日目はチケットも売り切れでダフ屋では5万の値が付いたという。都会型のフェスということで本当になにもかも利便性が高い快適なものだ。トイレの行列無し、清潔、飲み物もどこでもゲット可能、雨が降っても暑さでも屋内のパフォーマンスが多いため、避難が可能。雨が滝のように降ってきた今年のフジロックと比べると、快適さは比べようもないくらいこちらのほうが上だ。もちろんフジのような開放感は望むべくもないが。いろんなところで聞くにはフジのほうが絶賛一方でサマソニとの比較だとフジロックの支持率は圧倒的であるが、私は正直に言ってサマソニのほうが好きだ。この快適さは貴重である。

ただ唯一の欠点は音が悪く、フジは野外にもかかわらず、すばらしい音を聞かせるが、サマソニはいかにもフェスという感じの大雑把な音を聞かせるものだった。ほとんどベースのラインを聞き取ることが出来ないモコモコしたPAだった。これは改善して欲しい。

さて肝心の見たライブであるが

13日はアーケードファイア(フル)→ディープパープル(フル)→スリップノット(フル)NIN(フル)

14日はデスカブフォーキュティー(2曲)→パフィー(フル)→木村カエラ(1)→ブロックパーティー(3曲)→カザビアン(3)→ウィーザー(2)→ブラッククロウズ(3)→ザ・ラーズ(フル)です

ベスト3を選ぶと1位はアーケードファイア

アメリカで有名なフェス、コーチェラでNINやコールドプレイ、ウィーザーを押しのけて実際コーチェラに参加した人の最優秀パフォーマンスの投票で1位になったという話題のバンド、日本でもやってくれました。

2人のバイオリンの美しさ、あとの6人のギター、鉄琴、キーボード、パーカッションが次々に入れ替わり立ち代り挿入され、一人が何人もの楽器を担当し、ポーグスのような民族音楽、ベルアンドセバスチャンのようなオーケストレーション、ビョークのようなボーカルなど、ロックの古今東西の美味しいところが躍動したパフォーマンスできかせる2005年もっとも注目すべきバンドだ。

2位はラーズ。

この時間帯はオアシス、ウィーザーとも重なるため、ほとんどの人はメインのマリンスタジアムに移動していたが、ここに残った人はもうこのバンドの大ファンだけで埋め尽くされ、フェスならではの盛り上がりを見せていた。このバンドの素晴らしさは、本当にブリティッシュの香りを聞かせたところだ。キンクス、ジャム、フー、スミス、ストーンローゼスなど、最高のブリティッシュビートを聞かせる歴史を見事に再現した。最近クラシックでも地域性を聴かせるオーケストラは減ってきており、ウィーンフィルとか貴重な地域性をきかせるオーケストラになりつつあるようだが、ラーズも完璧なまでにリヴァプールの香りを振りまいていった。90年に一枚のアルバムを出して解散したこのバンドは15年のときを経て熟成したブリティッシュの匂いをここで開放させたかのように、熟成した美しいロックを聞かせてくれた。

さて私がもっとも期待して、これが聞きたいがために参加したNINは第3位。

楽曲の出来、演奏、ライティング、PAの音、すべてがもう圧倒的でフジロック、サマソニを通じての最高パフォーマンスであることは疑いようにもなかった。私個人は最高に満足。

始まる前にステージから10列目くらいというすごい場所をキープできた。この場所はもう始める前からNINコールで最高の盛り上がり。実際演奏が始まるとあのダークな楽曲にあわせみんな大合唱。NINが単なるノイズバンドでなく優れたメロディーを持っていることが改めて証明された。さすがにビルボード1位のアーティスト。ポップなのにヘビィ、ダンサブルなのにダークといった2面性がその音楽性の豊かさを際立たせている。

このすごくいい場所もだんだんただの肉弾戦の場所となってきて、脳天を誰かの肘でおもいっきり叩かれ、もう耐えられなくなり後ろのほうに下がった。かなり後ろのほうに来ると、もう歌ってる人は少ないし、座り込んで携帯する人も少なくない。これがちょっと白けた。NINの音楽は素晴らしくてもフェス全体を支配するほどの力をもっていないようだ。というよりフェスにこの音楽があっていないのかもしれない。フェスにはもっと祝祭に合う音楽が望まれているのかなと思うと、やっぱりこの場所より好きなファンの前で閉じられた空間でやってもらったほうがよかったかなという感じがして、第3位。

でもファンには素晴らしい贈り物だっただろう。あんな暗い歌詞、ノイズの音楽がやっぱりこれだけの人に支持され、はじめて聞く人にもきっとその凄さを体験させることができたはず。

なにしろサマソニの開催地の海浜幕張の新星堂を今日のぞいたら、NINコーナーがほとんど売り切れ。ある女性があと2枚に残ったCDのうち一枚をピックアップしていくのが見えた。それだけでもいいフェスが見れたと心地よい後味の感想が残った。

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2005年8月 4日 (木)

FUJI ROCK FESTIVAL 2005

行ってきました、フジロック苗場。

今年はいろんなところで話題になっているが、大雨にたたられて、

100%堪能できるような状態ではなかったと思う。しかし本当に感心したのは、皆が単にアーティストを見に来るというものでなく、フジロックを楽しむという姿勢がより浸透していて、私は過去2回フジロックを見ているが、今回のほうがずっと客が余裕を持って楽しんでいたようだ。だから皆はいうほど雨は気にならなかったのかもしれない。この感じは他のフェスには絶対ないものだ。

 

正直、私は今回かなりきつかった。トイレは大混雑、足はぬかるみだらけで、移動なんて面倒すぎ。いくらいろんなステージが用意されていても、移動だけで時間かかりすぎ(人もキャパに対して多すぎ)。食事はたしかに豊富でおいしいのだが、そこまでたどりつくのに一苦労。何をするのにも苦労が伴うので、この苦労をあえて楽しむ姿勢がないと、都市型のフェスとか快適なライブハウスだけになれている、ある程度歳をとったロックファンには結構つらい、というのが正直な感想。

 それでもあのグリーンステージの幻想的なイメージは本当に素晴らしい。今年のように天候が悪く、霧がたちこめてくるとそれだけで神秘的で美しい。また音響も素晴らしい上に、あの大自然に音が拡散していく感じは、それだけでもフジロックに着て良かったと思わせるものが確かにある。

 

私が参加したのは2日目、3日目だけで、その中で観たステージで印象に残っているのがベックとビーチボーイズ。両方ともベックは夜、ビーチボーイズは明るい夕方であったが、どちらもグリーンステージを美しく彩ってくれた。

 ベックはあのCDでの完璧な演奏を、この開放的空間でどのように鳴らすのかに興味があったが、生演奏を主体として、複雑すぎず、軽すぎず、機械的過ぎず、かといって生々しいグルーブというわけでもなく、絶妙にバランスの取れたベックらしいソウルと知的なものが混在した好感の持てるパフォーマンスだった。

 

  驚いたのがビーチボーイズ。はっきりいってブライアンウイルソンのいないビーチボーイズに誰が期待しただろう。ディナーショーみたいなものになるんじゃないかと、横にねっころがって聞き始めた。ところが、どこまでも伸びる高音。軽やかで弾むような美しいハーモニーにすっかりノックアウトされてしまった。声、コーラスの力がここまで求心力のあるものだとはびっくりさせられた。またビーチボーイズ側も下手なアーティステックな態度は見せず、もやは現役じゃないと開き直っているわけでもなく、力強く確信を持って、皆が一番聞きたい代表曲だけをオンパレードで演奏した。客もちゃんとわかっていて、手抜きでない最高のエンターテイメントを素直に楽しんでいて、踊りまくっていた。あの「サーフィンUSA」での会場の一体感、駆け抜けるような美しいハーモニーは家に帰ってきた今でも耳に焼き付いて離れない。あれを観れただけでも、滝のような雨に打たれた疲れを忘れることができた。

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