ライブレビュー「ベル・アンド・セバスチャン/belle&sebastian」2006年6月3日品川プリンス ステラボール
ベルセバことベルアンドセバスチャンのライブを見に行ってきた。ベルセバのライブの見所ってどんなものだろうか。やっぱりCDでのあの完璧な演奏を再現できるのか、あるいは近作でみせるポップでグルーブな感じをどう見せるのかなどなど。あれだけCDで特別な世界を堪能させてくれるグループなだけにライブへの期待値も特別なものになってもしょうがないだろう。
そしてこの夜のベルセバ、たぶんほとんどの人が持つ期待値を大きく上まり、現代のブリティッシュポップ/ネオアコの最高峰であることを完璧に見せ付けてくれた。このライブを体験した人も、残念ながら行けなかった人、これからベルセバを聴いてみようという人に向けて、今日はこの夜のベルセバのライブの魔法を4つのキーワードで探って行きたいと思います。
まずは「1.演奏の素晴らしさ」演奏がスタートしてまず目を引くのはバンドのメンバーの多さと楽器編成。チェロ、バイオリン、トランペットを含め総勢8人編成。これが皆とても巧い。巧いだけでなく楽器間相互のバランスが完璧。よくチェロなどの弦楽器をステージに持ち込むロックバンドは多いが実際エレキギターなどの音にかき消されてなんのためにそれを持ち込んだのか意味が分からないことが多い。ベルセバはチェロもキーボードもエレキもアコギもすべてが完璧なバランスで鳴らされ、響きの美しさがCD以上。ライブハウスとは信じられない音のよさである。また凄いのは一人でやく3つの楽器をこなすこと。8人編成というのはジャズはクラシックではあたりまえだが、ポップフィールドでは大変珍しい。しかもジャズやクラシックと違って、一人一人の楽器が固定されているわけでなく、さっきまでベースを弾いていた人がトランペット吹いたり、バイオリンの人が、キーボード、あるいはヴィヴラホーン、さらにはリコーダー、フルートとつぎつぎにいろんな楽器をこなす。それでいてその楽器はすべてエレキにまけずにきちんと響いてくる。そしてまとまりよく、バラードを繰りだしたり、モータウン真っ青のグルーヴィーかつファンキーでポップな演奏を次々に披露してくれる。ダンサブル/アコースティック/の間を自由自在に駆け巡ることが出来る。だから全然飽きることがない。
「2.DIYの精神」ベルセバが単なる趣味的ポップグループでない、強い主義主張をもったバンドだというのはCDでもはっきり分かる。でもライブを見ると特にその思いを強くする。ジャケット、T-シャツ、ステージ衣装、アレンジ、楽器演奏のすべて、を全部自分たちでコントロールしてきちんとファンに届けたいという姿勢がありありと感じられた。初期の名曲「The boy with arab strap」でのワンシーン。CDでは曲の途中主旋律をリコーダーの2重奏(あるいはダブルトラック)+ピアノで再現するところがあるが、実際ライブではまさか縦笛だしてきて弾いたりはしないだろう、なにかアレンジするのかとおもいきや、それまでピアノを弾いていた女性二人のメンバーがさっと縦笛をだしてきて、あの旋律を見事に2重奏するではないか。いや驚いた。ここまで自分たちだけで自分たちの世界を描きつくそうとするバンドはなかなかいない。ゲストも一切なしにである。
「3.80年代へのリスペクト」ベルセバが80年代のイギリスインディーズロック(ネオアコ系)に郷愁を持っていることはよく知られたことである。オレンジジュース、スミス、アズテックカメラ、フェルト、コクトーツインズなどなどの、私もリアルタイムで影響を受けたインディーズロックの数々。今となってはバカにする評論家も多い中、ベルセバは見事なまでにあの当時のロックを昇華し、現代にまで蘇らせてくれた。それもきちんとしたリスペクトを下地として。服装、髪型、繊細さ、ボーカルの美しさなどあの当時の雰囲気を丁寧に救い上げ、2000年代に再現させてくれた。当時とちがうのはベルセバが圧倒的に巧いということだけ。スミスなどが日本にこれなかっただけ、そうした因子を受け継いだベルセバを日本で見れることが本当にうれしい。最高に笑ったのが、スミスのモリッシーが得意としていたイカダンスというか痙攣ダンス。これはレディオヘッドのトムヨークもやっていたけれど、ブリティッシュロックバンドだけがやる不思議なダンスだが、ベルセバのスチュアートマードックも笑えるくらいイカダンスを披露していた。
「4.ファンを大切にする姿勢」最後になるけれどもとにかくライブではファンを大切にする姿勢を見せてくれる。スタジアムロックとかに慣れている人にはここまでファンサービスをしてくれるバンドを見るだけで目がうるうるしてしまうだろう。曲間で何かにつけて話しかけてくれて「どんな気分?静かにやったほうがいい?ダンスしたほうがいい?その中間?」とかいってみたり。「ライブの後はどうするの?ビール?ダンス?もしよかったら僕たちと話そうよ」といってみたり、とにかくファンに語りかけ、自分たちのエゴでなく演奏を楽しむことを共有してもらいたいという姿勢がとてもやさしく感じられた。ネット上ではあらかじめやって欲しい曲の投票なんかも行われていたようだ。曲も最新アルバムだけでなく、皆が聴きたいような昔の曲の積極的にとりあげ楽しませていた。
私はライブが終わると必ず周辺にいる人のしゃべっていることに注意深く耳を傾ける。それで皆が満足しているかどうかたいてい分かりのである。この日誰もが笑顔で「楽しかったよー」「最高おお!」という声があちこちから漏れていた。次の来日、きっと同じ会場では入りきらないほど人気が倍増しているに違いない。そう思わせるほど口コミで人に伝えたくなる暖かく楽しいコンサートだった。
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