先日日経新聞を見ていたら今年のヒット商品番付みたいなのが載っていて、なんとビートルズのリマスターがランクインしていたのでびっくりしてしまった。この日本で累計200万枚ちかく売れたというのだから本当に驚き(まあ、私みたいに一人でMonoBox,StereoBox買ってしまった人とかもいるから、実質10何万人なのかもしれませんが)。
ご多分に漏れず、この2-3か月、いつ以来だろうか、ビートルズにのめり込みました。思えば初めて好きになったロックで、それこそその後の人生を決めてしまったようなバンドだから、とにかくたくさん聴いたわけで、正直今更リマスターで音が良くなったからといってそんなに聴きこむかなと思っていたのだけれど、はまりました。音が良いってやっぱり凄いね。もちろん所持しているオーディオ装置も子供のころとは比べ物にならないので、音の良さも、リマスターと愛器のオーディオ(B&W,アキュフェーズ)の相乗効果で、昔を懐かしむのではなく2009年の音楽として楽しむことができた。
ビートルズのリマスターでとても好ましく思えることが2つある。1つは若い人も年季の入った人も、ロックが専門外の人も、ビートルズという「古典」に触れることで、ロックの貴重な財産に出会えること。ロックはクラシックやジャズと違って歴史が浅いため、ジャーナリズムはロックの素晴らしさは「同時代性にある」と訴えているような気がする。それは間違ってはいないけれど、同時代的な音楽も昔のロックのフォーマットを無視したり、影響をのがれたりはできないだろう。同時代の音楽を聴く楽しさと、古典を聴くことの楽しさと相反するものではない。ビートルズがなぜ歴史を超えて世界を超えて愛されつづけるのか、その深みを味わえる。
2つ目は「レコーディング芸術」としてのレコードやCD作品を楽しむことを再び光を当てたこと。これまた最近のジャーナリズムの風潮は「音楽はライブだ。フェスティバルだ。」というのがあまりにも行き過ぎていて、録音されたCDは、ライブの予習くらいのイメージ、つぎのライブに行くまでの、時間つぶしのような位置づけになってしまってきている。まあCDが売れないからそうなってきている面も大きいのだけれど、私のようにオーディオ好きで、そのために録音されたCDなどのレコーディング芸術を愛する立場からすると、最近のCD軽視はなんだか残念なような気がする。「優れた作品には、みんなが思っているよりずっとたくさんの感動が記録されているよ」と大声で叫びたい感じなのだが、このビートルズのリマスターはまさにそんな気分を後押ししてくれる。特にビートルズはある時期レコーディング芸術としてのレコードを意図的にライブと同等に優れたものにすべく注力していった。「サージェントペッパーズ」「リボルバー」等明らかにレコード芸術をめざしたビートルズの姿勢がある。リマスターCDは、ライブだけが感動できる音楽のあり方ではなく、CDも同じように楽しめることを教えてくれる。そんなリマスタービートルズ、私が好きな作品、あるいはリマスターで見直した作品も含めて、ベスト7の感想を。
第7位「Beatles for Sale」
地味、過渡的の一言で片づけられてきたフシがあるアルバム。振り返ってみて、たしかにこのアルバムを好きで聴きこんだ記憶があまりない。半数がカバーだからか、昔のCDやレコードの音が良くなかったからなのか(良さを反映できていなかったからか)。ところがリマスターで聴くと、もう新鮮そのもの。音が良くなったおかげで、このアルバムのもっている陰影感、奥行き感をずっと素晴らしく感じることができる。冒頭の3曲、おもにジョンの絶唱が好きでそこを中心に聴いていたけれど、リマスターは実にコーラスを美しく浮かびあがらせてくれる。この時期のビートルズがフレッシュさだけでなく、幅の広い表現を身に着けてることを感じさせてくれる。演奏も昔はカントリーなんて言われていたけど、陰影感を出すための軽さを表現できてると言った方が適切なような気がする。あまり好きじゃなかった「カンサスシティ」とか音のぬけが凄くて、コーラスのステレオ感が最高にカッコよいですね。イヤ反省しました。フォーセール、マイランキング上昇中です。
第6位「With The Beatles」
これ初めて買ったビートルズのオリジナル作品なんです。中学生の時、LPレコードでした。しかしなぜかその時の感動より、リマスターの方がずっと新鮮だったので驚いた。リマスターではっきりわかるのが、ファーストアルバムとの実力の違いと、R&Bへの傾倒度。子供のころは、ファーストとこの作品とひとまとまりに捉えていたけれど、故小野作品はずっとうまくなっていて、いわゆる「グルーブ」感が凄いですね。ジョンとポールのコーラスの掛け合いも迫力満点。「ハードデイズナイト」の洗練された感覚ともちがって、R&Bをごりごりとライブ感たっぷりにぶつけてくるところがこの作品の魅力。リマスターでのドラム、ベース、コーラスは生まれ変わったみたいに音がいい。
第5位「Rubber Soul」
1位に選ぶ人も多い、素晴らしい曲満載でムーディーなビートルズが聴けるところが魅力な中期の傑作ですが、リマスターだとベースになるビートの多彩な変化が味わえて、もともと多彩な色を持つこの作品が更に、切れも深みも増した感じです。美しい名曲という感じで正直それ以上のめりこめなかった「ミッシェル」など、そのリズムのおしゃれ感覚、ハーモニーの豊かさなど、なぜ人々がこの曲を傑作として扱ってきたのかが、遅まきながらやっとわかってきた。ジョージによるシタールの導入、ジョンのある意味ピークをなす傑作群はリマスターにより永遠の輝きをもたらしてくれると思う。
第4位「The Beatles(White Album)」
まあこのあたりになると特段順位があるわけではなく、どれが1位でもいいのですが。最近もっとも評価が高いアルバムですね。ビートルズによる音楽宇宙という評価にまで高まった傑作ですが、ごった煮スタイルで様々な音楽が導入されてるのは皆さんご存知だと思います。なかでも、メンバーが独立してアコースティックで録音した曲が多く(いろいろ不仲もあったみたいですが)、このアコースティックナンバーが大いにリマスター効果をあげている。ブラックバード、マーサマイディアなどなど。もちろんこのアルバムの最大の魅力であるジョンのシャウトしまくるハードロック群もよりエッジをもって迫ってくる。まあでもこの作品はリマスター効果というよりは、この独特なスケールの大きさこそが永遠の魅力なのでしょう。
第3位「Revolver」
これは今回のリマスター効果の最大限の恩恵をうけた作品の一つでは。ベースとドラムの低域の迫力、豊かさ、グルーブが半端じゃない。どれもカッコイイのだけれど、なんと今まであんまり聴かなかったジョージの2曲(タックスマンを除く)が、シタールを巻き込んでインドとロックが完全融合した崇高でノリのある曲だと初めて心の底から感動できたのが一番の収穫。この作品も、ロック的かつ現代的ということで再評価著しい作品であるが、どうもそれがジョンの「Tomorrow never knows」(これ文法的には全然正しくないとエンジニアのジェフエメリックが言っておりました)に偏っているのが気になっていますが、このジョンの名曲だけでなく、ジョン、ジョージ、ポール(そしてリンゴもイエローサブマリンで最高のパフォーマンス)のそれぞれの実力がみごとにバランスをとっているのが、素晴らしい。とにかくビートに切れ、コク、深みがあってそこだけ聴いていても、心を奪われる
。第2位「Sgt Peppers Lonely Hearts Club Band」
これが近年評価を下げているというか、人気が下降してきている作品かもしれない。私自身は元々この作品が好きになれず、リマスターがでるまでどうも何度も繰り返し聞くというタイプの作品ではなかった。ポールが主導を取り、これといって名曲の集まりというのではなく、そこそこの曲を、とてつもないアレンジとコンセプト立てしたところに凄味があり、ただそのゴージャンス感が自分には合わないのかなあなどと思っていた。ところがこの素晴らしいリマスターで、アレンジやコンセプトというより、音自体の練り込まれた魅力、磨きに磨き込んで多彩な色を放つ、その美しさに圧倒されてしまった。「あ、これがサージェントペパーズの凄さか!」と今頃気付いたというわけです。
第1位「Abbey Road」
これはリマスターと全然関係なく、とにかく一番よく聴いたビートルズのアルバムということで1位です。ジャケット、アビーロードという響き、しなやかな美しさ、メドレーの圧倒的な構成力、不思議な透明感すべてが好きです。迫力がないとか、表面だけとりつくろったビートルズとかの評価もありますが、これぞビートルズとも思わせる高みともいえます。リマスターで聴いてもこれは新鮮というより生まれながらの永遠なる作品という感じで完結した作品ですね。
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